さんらんのハラスメントに対する対策と指針

 

演劇は1+1=2というものではありません。

感情を持った人が集まり、各々の力と情熱を混ぜ合わせることで、豊かな芝居をお客様にお届けできると考えます。

よい座組がつくれた時に1+1は千にも万にもなると思います。

その為には俳優、スタッフが安心して演劇に向かう環境づくりが大切です。

演劇は真剣にやれば、上手くいかない時にとても傷つきます。

役を生み出し作品をつくるのは、いつも心が安らかで、ぬくぬくとやれるものではありません。

だからこそ、何がハラスメントにあたるのか、ハラスメントをなくすにはどうしたら良いのかを考え、実践することで、作品をつくる俳優、スタッフの心と身体を守ることが必要です。

そしてそれが良い芝居をつくることに繋がると考えます。

ハラスメントに対する方針は、常に確かめ、必要であれば加え、改め、ハラスメントが起きない環境づくりにつとめます。

また、もしもハラスメントを受けた場合、現場を見た場合にどうすればよいかという指針をつくります。

以下は芝居をともにつくる全員に、留意し、つとめることを求めるお願いです。

 

 

「セクシャルな要求の否定」

●さんらんの演劇をつくるにあたって、俳優、スタッフ間にセクシャルな関係性は不要と考えます。

●俳優、スタッフに対して、作品のシーンに関係しない、身体の接触、肌をさらす、性的な行為を示唆するポーズをとるといった行為を主催者、及び演出が求めることはありません。

また、さんらんの演劇をともにつくる全ての俳優、スタッフは同様に作品に関係しないセクシャルな要求を他者に求めないことをお願いします。

●俳優間でのウォーミングアップとしてマッサージを行います。しかし、このマッサージは必ず、各人の合意をとり衆人環視のなかで行います。軽いマッサージの範疇で行い、デリケートな部位への接触は禁止します。

●作品づくりにおいて、一部の肌を出す、抱きしめるなどの行為は、本当に必要なのかよく検討します。

真っ裸になる、キスをする、擬似性行為、扇情的な映像を流す、などの演出は、さんらんの演劇には不要なので行いません。

●主催および演出は、すべての俳優、スタッフに対して、一対一で食事に誘う、セクシャルな関係を求めるなどはありません。演劇と関係ない電話、通信を求めることもありません。

●例外として、主催、演出が劇団員やスタッフと打ち合わせとして食事をしたりということはありえます。また、俳優に対してもお互いの信頼関係ができた上で、タイミングによっては食事を共にしたりという可能性はあります。

ただし、いずれにしても社会通念上、仕事関係、友人関係とみなされるもの以上の付き合いは求めません。

●恋愛は各人の心の自由です。演劇は皆でつくるものであり、濃密な関係が生まれやすいです。したがって、そこに好意が生まれるのは自然なことです。

けれど、稽古、本番期間は、好意をもった相手のためにも、座組全体のためにも、好意を伝えて関係性を変えるように求めることはしないでください。

●セクシャルハラスメントは、自分の恋愛対象の性に対してのみ行われるものではありません。

全ての性に対して上記したようなセクシャルな要求に近しい行為は避けます。

 

「暴力の否定」

●心と身体に対する暴力はこれを認めません。何が暴力にあたるのかは、各人の経験でのみ判断せずに、社会通念を踏まえ、座組内で話し合いの出来る環境をつくります。

●作品のシーンに関係しない殴る、蹴る、頭をはたくなどの行為は禁止します。

●さんらんではアクションシーンにおいて、実際に武器や拳をあてることはしません。

ただし通常のシーン内において、俳優間でたたく、突き飛ばすなどの行為は実際に行うことがあります。安全に留意し、俳優があまり痛みを感じない方法を模索します。

●演出はキャスト、スタッフへの要求の際に、怒鳴る、一般的に暴言とされる言葉を用いるということはありません。

●演出は個々の関係性において適切な言葉を模索し、また自身が感情的になってしまう場面においても、威圧的な言動に及ばないように留意します。

●演出と俳優が一対一で稽古をすることは、原則としてありません。一人のシーン、一人芝居などの状況においても、極力、一対一での稽古を行わないようにつとめます。

  

「ヒエラルキーの排除」

●キャスト、スタッフ全員に人権があり、それぞれに違う経験と感情を持つ人間であることを忘れません。

●演技、スタッフワークなど部署に限れば、熟練度や経験の差はあり、それは尊重されるべきものです。

また指導する指導されるという関係が起こり得ることも、そこに威圧的なものがなければ、よいと考えます。

演出のみならず、キャスト、スタッフ間においても、作品をより良いものとするための、お互いの指摘、助言は、経験や熟練度とも関係なく積極的に行なってよい行為です。

●経験や熟練度は尊重されるべきものですが、それをもって発生するヒエラルキーは認めません。

●演出、プロデューサーなど立場から発生するヒエラルキーはこれを排除します。

 

お客様に俳優が役を生きる行為=演技を中心とした物語性のある作品を、俳優、スタッフ皆の力を結集してつくり、お客様に時間と空間を共有するなかでお届けする。

お客様の人生のなんらかの糧になるものをつくる。

これが、さんらんの演劇の目標です。

けれど、この目標のために座組の誰かの人生を損なってはなりません。

極力、皆が安心して力を発揮出来る環境をつくることが、結果として上記の目標にもかなうと信じます。

今、考えうることを指針としてあげましたが、どうしたら良い環境がつくれるかは、常に考え、改めていくことと思っています。

どうぞよろしくお願いいたします。

 

さんらん

尾崎太郎